分布 北海道、本州、四国、九州
特徴 卵は薄い緑色。幼虫の色は緑色で2齢幼虫から立派な角を持つようになります。幼虫の形、生態はオオムラサキ(日本の国蝶、天然記念物ではありません)、アカホシゴマダラ(特定外来生物に指定)に非常に似ています。下の写真②の背中の突起物が3対あるのがゴマダラチョウ、4対あるのがオオムラサキ、アカホシゴマダラです。また、上の①の写真(赤丸の所)の尻尾の先が2又に分かれているのがゴマダラチョウとオオムラサキ。くっついているのがアカホシゴマダラです。
生態 幼虫はエノキの葉を食べます。成虫は年2回発生します。(温暖だと3回)春型、夏型の季節型の違いが成虫にはあり、幼虫も夏型は緑色のまま終齢幼虫となり蛹になりますが、春型は4齢幼虫で越冬する際、体の色が茶色(落ち葉のような色)に変化します。越冬は落ち葉の中でします。春になると脱皮し終齢幼虫(5齢)となり蛹になります。
下のボタンは、アカホシゴマダラ、オオムラサキの幼虫のサイトです。
ゴマダラチョウの成虫は、素早く、木の上の方を飛ぶ性質のため、なかなか捕まえられません。エノキの木でこのような幼虫を見つけたときは、是非飼育してください。飼育は難しくないので、羽化させることができるかもしれません。夏休みの自由研究にしてみてもいいかもしれません。7月初旬に卵の状態からだと、ギリギリ8月末頃に成虫になると思います。
飼育に必要なもの
・エノキの葉(枝)
・エノキの枝を刺すカップ
・飼育ケース
・ガーゼ、ティッシュペーパーなど
幼虫のエサはエノキの葉です。公園や神社などでよく見かける木で、珍しいものではありません。また、よく探すと街路樹の隙間などの空いたスペースにそこら中に生えています。
幼虫の飼育ケースの作り方
カップにガーゼ(またはティッシュペーパー)を入れ、水を入れます。この時、カップの隙間がガーゼで全て埋められているようにして下さい。幼虫が水に落ちて溺れてしまうことがあります。後はエノキの枝をそこに刺します。
飼育ケースに先ほど作ったエノキの枝を刺したカップを入れ完成。後は幼虫を入れます。この時出来るだけ幼虫を手で触らないようにしましょう。幼虫が弱ってしまいます。ヨーグルトなどを食べる時に使うプラスチックや紙のスプーンですくい上げて下さい。
幼虫のエサと管理
幼虫はエサをよく食べてフンをたくさんします。飼育ケースは汚れたらきれいにしてあげないと虫がわきます。エノキの枝を水の入ったカップに刺したとしても、ちゃんと管理しないと2日ぐらいしかもたないので、このホームページの「困った昆虫のあれこれ」の「葉っぱの鮮度を保つ方法」を参考にして下さい。エノキは鉢植えのものを買ってくると世話が楽になると思います。
ゴマダラチョウの幼虫の成長過程
成虫が産んだ卵です。始めは薄い綺麗な緑色をしています。孵化が近づくと卵が黒くなっていきます。私は初めて見た時、夏の暑さで卵が死んでしまったと思いました。しばらく観察すると数日後、幼虫が殻を食い破り出て来ました。卵の殻から透けて幼虫の頭の色が見えていたようです。
孵化から6日ほどで2齢幼虫になったものが出て来ました。孵化したばかりを1齢、一度脱皮したものを2齢幼虫といいます。頭に特徴的な2本の角が出てきて、背中に3対の突起物が出て来ます。この頃、脱皮中に死んでしまい数が激減するそうです。私は飼っている時、幼虫は非常に小さいので、飼育ケースが広すぎた為にエサに辿り着けずに餓死したのかな?と思っていました。実際50匹前後はいた1齢幼虫がこの頃には20匹程度にまで減っていました。どんな生き物でも小さい時は弱いということでしょうか。
夏場の場合、4齢幼虫は緑色ですが、気温が下がってくると4齢幼虫は落ち葉のような色に変わり越冬します。落ち葉の中を探すと見つかるそうですが、私はまだお目にかかったことがありません。
これは幼虫の蛹になる直前の写真です。奥の幼虫の色と比べると、蛹になる幼虫は黄緑色をしているのが判ると思います。幼虫は蛹になる2日前ぐらいから、色が蛹により近い薄い黄緑色にに変化します。色が変化したら蛹になる予兆だと思って下さい。
8月終わりに羽化したゴマダラチョウ。さなぎになってから1週間ぐらいです。夏型のようです。
ゴマダラチョウの幼虫は昆虫図鑑などに、冬を木の葉の中で越すと書いてあります。今回は、冬を待たずに羽化しました。
飼育で気をつけること
卵から孵化した幼虫は非常に小さいので、普通の飼育ケースでは隙間から逃げてしまいます。また、柔らかい新鮮な葉でないと餌を食べられない場合があります。隙間がほとんどないような飼育ケースもインターネットなどで買えますが高価です。私の場合、飼育ケースの蓋を外して、代わりにサランラップを貼って輪ゴムで止めています。サランラップは針で空気穴を開けるようにしています。他に、タッパーの中で飼う方法もあります。この場合も蓋には空気穴を開けて下さい。
幼虫を飼育していると、幼虫が死んでしまうことがあります。これが連続して死んでいく場合、感染症の疑いがあります。(血のようなものを吐いて死んだ幼虫がいれば感染症の可能性は益々高くなります)直ぐに、元気な幼虫を他の飼育ケースに移すか飼育ケースをよく洗って下さい。
幼虫や蛹の体に黒い点が大きくなっていく場合、これは寄生バエに卵を産み付けられ、寄生バエの幼虫が成長している可能性が高いです。飼育ケースに入られて産み付けられたか、幼虫を野外で捕獲した場合は、既に産みつけられていたと考えられます。飼育ケース内に入られない方法としては、飼育ケースの蓋の代わりにサランラップなどを貼って輪ゴムで止めようにします。要は飼育ケース内に寄生バエが入れないようにすることです。野外で寄生バエに卵を産み付けられることはよくあることで、今の所、寄生された幼虫を助けられる方法は知りません。確認(下の写真)したら処分する他ありません。もし、幼虫を助ける方法を知っている方がみえたら、HPのTOPの”ご意見、ご感想”の欄に書き込みをして頂けると嬉しいです。
ゴマダラチョウの幼虫の飼育記録
2019/7/17
飼っていたゴマダラチョウが、卵を産んだ。薄緑色の小さな卵を30個ぐらい産んだ。直ぐに卵を別の飼育ケースに移し、新しくエノキの枝を入れる。
7/18
今日も卵を産んだ。また、新しくエノキの枝を入れる。
昨日産んだ卵が黒色になる。幼虫の色?死んでしまった?解らないので、様子を見ることに。卵が黒く見えたのは、幼虫の頭部の黒色が卵の殻?から透けて見えたからのようです。
7/19
ゴマダラ母さんは今日も元気。また新しく卵を産んだ。卵に変化はなし。
7/20
またまた今日も卵を産んでいた。全部で50個ぐらいはあるかも?
7/22
今日飼育ケースを見たら、卵が孵化していた。よくよく見てみると、少し大きいのが混じっている。もしかしたら、昨日孵化したものもいるかもしれない。大きさは2~3㎜ぐらいで、頭部が黒く体が緑色の毛虫という感じ。とても小さく写真に綺麗に映らないので、写真が載せれないのが残念。いろいろいじってみると糸を吐いた。全部で30匹ぐらいいそう。卵を産んで5~6日で孵化したことになる。
あまりにも小さい幼虫なので、飼育ケースの小さなすき間から逃げてしまう。仕方がないので、飼育ケースにサランラップを貼って、針で小さな空気穴をあけて飼育することにした。
7/25
どんどん孵化し、今、何匹いるのかわからない。でも、一部が死んでしまった。暑さのせい?他に原因はないだろうか?
7/27
幼虫の中に角のあるものがいる。2齢幼虫になったようだ。
8/1
2齢が何匹かいるが、全部で20匹くらいしかいなくなってしまった。1齢~2齢になる際、多くが死んでしまったようです。飼育ケースのそこらじゅうに幼虫は散らばってしまいます。幼虫の中には、エノキの所にたどり着けずに、餓死または熱中症などになって死んでしまっているのではないのだろうか?実際には2齢幼虫への脱皮の時、非常に死亡率が高いと後で知りました。
8/8
1匹を除いてみんな2齢になった。エサを食べてどんどん大きくなっているが、毎日少しずつ死んでしまい、今では11匹まで減ってしまった。エノキの葉を替えるときは、1匹づつ捕まえて葉っぱに乗せるようにした。
8/10
とうとう7匹にまで減ってしまった。幼虫はエサをもりもり食べるが、元気があるかないか区別できない。
8/15
3齢になった個体もいるようです。現在幼虫は4匹。
8/17
1匹がカップの水で溺れて死んでしまいました。現在3匹。みな元気そう。
8/22
現在3匹。大きくなると死にくくなるようです。最も重要な時期は、生まれた直後のようです。50匹ほどいたようですが、飼育ケースの壁や天井(サランラップを貼って作った)にそのほとんどが這い回っていて、エサのエノキの枝から離れてしまっていました。恐らくは、空腹や喉の渇きを感じても、直ぐにエサの所に戻れず死んでしまったのではないかと思われます。課題としては、エサの近くに幼虫達がどのようにすればいてくれるかということです。
9/5
幼虫が1匹死んでしまいました。残り2匹。その内の1匹が蛹になった。もう1匹は一回り小さいので、まだ蛹にはならないと思います。
9/11
ついに羽化しました。でも、非常に小さい。このまま飼育してみようと思います。もう1匹は、まだ幼虫のまま。
9/16
羽化したゴマダラチョウが死んでしまいました。エサをあまり摂らないことが気にはなっていました。最後の1匹の幼虫は元気です。
9/24
最後の1匹は順調に大きくなっています。いつ蛹になるのだろう。
10/14
ゴマダラチョウの幼虫の様子がおかしい。元気がない。大丈夫だろうか?
10/15
幼虫は死んでしまいました。残念です。
今回の飼育で解ったこと、問題点など
卵は50個はありましたが、孵化で30匹程に減り、2齢幼虫になる頃には10匹程度まで減ってしまいました。1つは幼虫の大きさに対して広すぎる飼育ケースで飼ったため、エサに辿り着けず死んでしまったのではと考えています。生鮮野菜、果物などを入れるプラ容器などの狭い所で飼えば良かったのかもしれません。あと、小さな幼虫は人間でいうと赤ちゃんなので、硬い葉のものは食べられないのかもしれません。新芽を採って来れば良かったと後悔しています。
2020/6/26
今日、ナナフシのためにエノキを採りに近所の古墳へ行ったら、ゴマダラチョウの幼虫を1匹捕まえました。ナナフシの飼育ケースで一緒に飼うことにしました。
7/7
ナナフシの世話をしようとして飼育ケースを開けてみると、ゴマダラチョウが蛹になっていました。ナナフシの飼育ケースから取り出して別の場所で管理します。
7/14
今日帰って来たら、ゴマダラチョウが羽化したと息子から聞きました。いつもなら、蛹の中から翅の模様が透けて見えてから2~3日で羽化しますが、昨日は翅の模様が見えませんでした。
明日、雨が止んでいる時に逃がそうと思います。
2020/8/2
昨日から飼育していたゴマダラチョウが卵を産んだ。
8/6
ここ数日はゴマダラチョウは卵を産んでいなかったが、今日久しぶりに10個足らず産卵しました。卵はゼリーのカップに入れました。
8/7
朝見てみると、卵が孵化していまいた。このままゼリーのカップで飼おうと思っていましたが、去年は多くを1齢~2齢の時期に死なせてしまいました。同じ様な飼育方法では、また死なせてしまうかもしれません。そこで、新しく下の写真のような飼育方法と考えました。
幼虫は枝の先端に袋を付けて、そこで飼育します。空気穴を針で開けてあります。
このようにすると、エサを長く新鮮な状態で与えれます。孵化したばかりの幼虫は人間で言えば赤ちゃんにあたります。柔らかい若葉でないと食べにくいでしょうし、エサが良い状態でないと直ぐに死んでしまう危険性があります。
8/11
今日、エノキの枝を取替えようとすると、ゴマダラチョウが2匹2齢幼虫になっていました。上の写真(上側の幼虫)が2齢、下が1齢です。
8/14
今回は卵が15~18個くらいしかありませんでした。現在、2齢9匹、1齢1匹の合計10匹になりました。前回の飼育では、卵が50個以上あったのに孵化で30匹程度に、2齢になる頃には10匹程度まで減ってしまいました。それを考えると、新しく考えたエノキの枝をビニール袋で包み飼育する方法は、死亡率が大幅に下がりました。要因は、エノキを出来るだけ柔らかい新芽を与えるようにしたこと。長い時間新鮮な状態でエサを維持できるようになったことが挙げられます。この方法は他の蝶の幼虫飼育にも転用出来そうです。
8/21
今もエノキの枝にビニール袋をつけて飼育をしています。9匹にはなりましたが、順調に成長しています。幼虫が大きくなってきたので、そろそろ飼育ケースで飼うことができそうです。
8/24
順調に成長していたはずの幼虫の1匹が体液を吐いて死にました。よく見るともう1匹死んでいます。体液を吐いているので感染病の疑いがあります。残りの7匹を3カ所に分けて飼育することにしました。
8/25
今日も1匹、体液を吐いて死にました。暑さも心配なので下の写真のような飼育方法に切り替えました。
クーラーボックスには6リットル程の水を入れてあります。その中に、ミヤマクワガタ、スジクワガタ、ヒラタクワガタの産卵セットとゴマダラチョウの幼虫が入れてあります。温度調整は左端に写っている500mlの凍らせたペットボトルでしています。クーラーボックス内の水温(写真左側下に水温計があり、底に入っている6リットルの水の温度を測っています)が上がってきたら凍らせたペットボトルを交換しています。昆虫程度の呼吸では丸1日でもクーラーボックス内の酸素は無くなりません。
8/26
今日は1匹も死んでいません。6匹とも元気です。
8/28
6匹の幼虫は元気そうです。感染を疑っていましたが、おそらく、もう大丈夫だと思います。
8/31
容れ物を3つに分けて飼育していましたが、その内の1匹が死んでしまいました。死んだ幼虫と同じ容れ物で飼育していた幼虫は、今までと同じようにペットボトルで飼育します(感染症の疑いがあるので)。他の4匹は普通の飼育ケースで飼育することにしました。
9/6
夜にエサを取り替えようとした時に、1匹が葉っぱの上で動かない。どうやら蛹になるようです。
9/7
ゴマダラチョウの幼虫が1匹蛹になりました。他4匹の幼虫も元気です。ただ、1匹のみ成長が遅いので気がかりです。
9/8
さらに1匹が蛹になりました。エサの取り替えの時に、幼虫を触ると噛もうとします。以外に凶暴な1面もあるのかな?先に蛹になった幼虫が黒くなってきました。もしかして、もう生まれるのでしょうか?
9/10
先に蛹になった幼虫は黒くなってしまいました。始めは翅が透けているかと思っていましたが、何らかの原因で死んでしまったようです。
9/12
今は、蛹が1匹、幼虫が3匹です。ただ、幼虫の1匹が成長が遅れています。今何齢か判りません。体の形状自体は4、5齢に見えます。
9/13
蛹の色が変化して翅の模様が透けて見えています。明日には羽化しそうです。さらに、もう1匹動かなくなった幼虫がいます。蛹になりそうです。
9/14
昨日、翅の色が透けて見えていたゴマダラチョウが羽化しました。写真を撮らずにそのまま逃がしました(息子よ撮って欲しかった)。動かなくなっていた幼虫はまだ蛹になっていません。
9/15
動かなくなっていた幼虫が、今日蛹になりました。
9/17
今日、さらにもう1匹が蛹になりました。あと、幼虫は成長の遅れている個体だけになりました。
9/20
蛹の翅が透けて見えています。明日羽化しそうです。翅が綺麗に伸びてくれることを祈ります。
9/21
朝にゴマダラチョウが羽化していました(上の写真)。翅も綺麗に伸びました。昼に逃がしました。
9/25
朝見てみると、ゴマダラチョウが羽化していました。昼には逃がしました。今回はこれで3匹の羽化に成功しました。20個弱の卵から3匹成虫にすることができたので、前回よりも飼育方法が良かったと思います。あと残るは、成長の遅れている幼虫1匹のみです。まだ十分な大きさには成長していません。
10/7
成長の遅れていた最後の幼虫が蛹になりました。屋内で飼っているので冬眠しなかったようです。
10/15
最後のゴマダラチョウが羽化しました。今から逃がしても仲間がいないような気がするので、そのまま飼育することにしました。
今回の飼育で解ったこと、問題点
今回は20個弱の卵しか産んでくれませんでした。前回の飼育で、2齢になる時に多くを死なせてしまったことを教訓として、今回はエノキの枝先にビニール袋を付けて、その中で飼育をするという方法を採りました。この方法で2齢を9匹飼育出来ました。生存率は5割程度ですが、前回の飼育より上手く出来たと思います。この飼育方法は、他の蝶にも転用できそうです。その後、病気(感染症?)もしくは酷暑が原因で幼虫を減らしてしまいましたが、最終的には4匹の成虫を羽化させることができました。メス1匹に対して2匹以上羽化に成功すれはノルマ達成と考えていました(個体数を増やすという意味でのノルマと決めています)。問題点としては、やはり真夏の暑さ対策です。屋内は外に比べ室温が高くなり、連日室温は35℃前後ありました。クーラーによる温度管理をしない場合、私が今回やったクーラーボックスによる対策が1つの方法だと思います。クーラーボックスの代わりに、魚の運搬などに使う発泡スチロールの容れ物でも代用できますが、温度の発散が大きいので、氷がより多く必要になると思います。