葉っぱの鮮度を保つ方法

 タマムシ、ゴマダラチョウの幼虫にはエノキの葉。アオスジアゲハの幼虫はクスノキの葉、ラミーカミキリにはカラムシの葉など。成虫や幼虫を飼育するためにはいろいろな葉っぱが必要になります。でも、毎日採って来るのはたいへんです。そこで、採って来た葉っぱをどのようにすれば長持ちするか紹介します。

タッパーにいれたカラムシ
タッパーにいれたカラムシ

 上の写真はカラムシをタッパーに入れたものです。これを冷蔵庫の野菜室で保存すると、5日程度は新鮮なみずみずしい状態を保てます。カラムシに限らず、他の葉っぱも同じです。

採って来た枝ごと鮮度を保つ方法

 ここからは、エサ用に採って来た葉っぱの付いた枝ごと鮮度を保つ方法を紹介します。まず、次の実験を見て下さい。

葉っぱ長持ち実験初日
葉っぱ長持ち実験初日

 上の写真は、葉っぱの長持ち実験をしたものです。

A・・・枝を水の入れた容器に入れたもの、その後、そのまま放置します。

B・・・枝を水の入れた容器に入れたもの、その後、毎日枝先を切り水の吸い上げを良くします。水は毎日入れ替えます。

枝の切り方
枝の切り方

 上の写真の赤いラインで斜めに毎日5~10㎜枝先を切ります。そうすることで切り口の面積が大きくなるので水の吸い上げが良くなります。また、水に浸かる枝や葉は切ります。水の吸い上げが悪くなる原因は、バクテリアが繁殖することだそうです。余分な枝や葉が水に浸かると、そこでバクテリアが余計に繁殖するため、水が早く悪くなり萎れる原因になります。また、葉が萎れるのは、葉からの蒸散作用が茎からの水の吸い上げを上回るからです。したがって、水の吸い上げこそ葉を新鮮に保つキモになります。

 A、B、C、Dの最初は同じように枝を斜めに切り、余分な葉を落とします。

C・・・園芸用オアシスに枝を挿して、その後、容器に不足分の水は足しますが、それ以外は放置します。

D・・・園芸用オアシスに枝を挿して、毎日Bと同じく枝先を切り水の吸い上げを良くします。容器の不足分の水は足します。

 実験の目的は、AとBの比較で、毎日枝先を切り、水を替える場合との鮮度の違いを見ます。CとDの比較も同じで、枝を切ることによっての鮮度の違いを見ます。A、BとC、Dの比較は、園芸用オアシスの効力を見ます。

㊟園芸用オアシス・・・フローラルフォームが正式名称です。オアシスはミスザーズオアシス社の商品名

葉っぱ長持ち実験2日目
葉っぱ長持ち実験2日目

 実験2日目にしてCが早くも萎れ始めました。A、B、Dの状態は大した違いはありません。

葉っぱ長持ち実験4日目
葉っぱ長持ち実験4日目

 4日目になると、Cは完全に萎れいます。ただ、Bが萎れてきているようです。A、Dはまだいい状態です。Bが萎れてしまうのは変なので調べてみました。

 枝先を切るとき、空気中で行うと切断面から気泡が入り、その気泡が水の吸い上げを妨げるそうです。これを回避するには、生け花などでやる”水切り”という作業が必要になります。水切りは、バケツなどに水を入れ、その水中で枝切りを行う作業です。そうすれば気泡が入らなくなるそうです。気泡による水の吸い上げ阻害は頻繁に起こります。枝を刺したその日または次の日に萎れるのは気泡が原因のようです。

 実験が上手くいかなかったのでもう1度仕切り直しです。

葉っぱ長持ち実験初日(2回目)
葉っぱ長持ち実験初日(2回目)

 前回と同じ条件で2回目をやってみました。

葉っぱ長持ち実験2日目(2回目)
葉っぱ長持ち実験2日目(2回目)

 前回の実験同様にCの先端部分の葉っぱが萎れ始めました。このことから、園芸用オアシスに挿したままでは、Aの水に挿したままのものより早く萎れることが解りました。

葉っぱ長持ち実験4日目(2回目)
葉っぱ長持ち実験4日目(2回目)

 4日目になると、Cは完全に萎れました。Aも萎れ始めました。B、Dは大差はありません。

葉っぱ長持ち実験6日目(2回目)
葉っぱ長持ち実験6日目(2回目)

 6日目になると、A、Cは完全に萎れています。Bは枝先が若干萎れています。Dは萎れてはいませんが、根元の葉が黄色く変色し始めています。

葉っぱ長持ち実験7日目(2回目)
葉っぱ長持ち実験7日目(2回目)

 7日目です。Bは若干萎れています。Dは根元の方の葉から黄色く変色しているのが顕著に現れています。今回の実験はこれで終了します。

 次の実験は、

A、B・・・前回と全く同じ。

C・・・前回のDと全く同じで、毎日枝先を切って挿す直します。

D・・・前回に使ったオアシスを使い、毎日枝先を切って挿す直します。

 実験の目的は、A、B、Cは再確認をし実験の精度を高めるために行います。Dはオアシスを使い回した場合どうなるかを調べます。

葉っぱ長持ち実験初日(3回目)
葉っぱ長持ち実験初日(3回目)
葉っぱ長持ち実験3日目(3回目)
葉っぱ長持ち実験3日目(3回目)

 3日目にしてA、Dが萎れ始めました。気になるのはDの葉が根元の方から変色していることです。

葉っぱ長持ち実験4日目(3回目)
葉っぱ長持ち実験4日目(3回目)

 4日目です。前回、前々回に比べると30℃を超えるような猛暑日が多かったこともあり、全体的に長持ちしなくなってきました。比較的Bがマシな状態です。この実験は今日で打ち切ります。

実験結果からの考察

 毎日枝先を切り水を替えるなどのメンテナンスをすると、葉っぱの鮮度は長持ちします。また、園芸用オアシスの場合は特に毎日の枝切りが必要です。毎日のメンテナンスをしなければ1日で萎れてしまい、オアシスを使用しない方がいいことになります。(㊟このオアシスは100均で買ったものです。ホームセンターなどで売っている高価なものは結果が違ってくるかもしれません)また、毎日のメンテナンスをするのであれば、オアシスを使う場合と水に直接挿す場合では、あからさまな違いはありませんでした。ただ、気になるのはオアシスを使用した場合には、枯れる前に黄色く変色する現象が見られましたが、昆虫の飼育にどの様な影響が出るか直ぐには解らないと思います。

 結論として、容器に水を入れ枝を挿し、毎日枝先を切り水替えをするのが無難で、最も葉っぱの鮮度が保てるようです。オアシスを使うのであれば、毎日枝先を切る作業は絶対条件(直ぐに枝先が変色し水の吸い上げが悪くなります)で、それをしないのならばオアシスは使用しない方がいいです。オアシスを使う利点は、枝が真っ直ぐに挿せること、容器に昆虫が落ちた時に溺れる可能性が少なくなることが挙げられます。

 鮮度を維持するには、先に説明した”水切り”はした方がいいと思います。

タマムシの飼育ケース内の様子
タマムシの飼育ケース内の様子

 タマムシなどのエサの鮮度を気を付けなければならない昆虫には、容器に水を入れたものに枝を挿して与えています。毎日枝先を切り水を替えます。気温にもよりますが、この状態なら3~4日は萎れませんが、タマムシの場合は非常に繊細なので2日で新しい枝に交換しています。ナナフシなどは多少萎れても食べてくれるので、3~4日でも大丈夫だと思います。ただ、水分不足で死んでしまう可能性があります。エサは新鮮なものをというのが基本だと思います。

 ここの先頭に冷蔵庫で保管する方法を書きましたが、他の方法として、採って来た枝を分けて、エサとして与える用と保存用を作り、別々に水に挿しておく方法があります。毎日のメンテナンスをすれば枝の鮮度は保てます(植物の種類によりますが、3~5日鮮度を保てると思います)。私は今ではこの方法を採っています。ただ、気温が高くなると萎れるのが早くなるのでケースバイケースだと思います。