アオスジアゲハ幼虫の育て方、飼い方

アオスジアゲハ
アオスジアゲハ

分布 本州(東北地方では稀)、四国、九州

特徴 前翅長30~45㎜程度。5~10月頃まで見られます。翅は黒地に青緑色の帯が入り、この帯には鱗粉がなく透き通って見えます。上の写真でも奥側の翅が帯から透けて見えるのが確認できます。アゲハチョウなどに比べ身体が太く、俊敏に飛び回るため空中での捕獲は非常に難しい。吸蜜中や吸水のため止まっている時が捕獲のチャンス。

生態 市街地から野山までどこにでも見られます。成虫は花の蜜をエサとし、吸水性が強いので、吸水のため地面に下りることがよくあります。幼虫のエサはクスノキ、タブノキなどの葉。若齢の時は若い葉を食べるので、そこに親は産卵します。幼虫期間は約1か月で、幼虫は5回の脱皮を経て、葉の裏で蛹になります。飼育の場合飼育ケースの天井とかでも蛹になります。越冬は蛹でします。幼虫はつつくと臭角を頭部から出し(半透明なオレンジ色)、広い範囲で大変臭い。

アオスジアゲハの幼虫の飼育環境

 プラスチックの飼育ケース小(160×100×高さ120)の物で十分です。そこにカップに挿したクスノキの枝(作り方は”ナナフシの飼育編”を参考にしてください)を入れます。幼虫が小さい時は、飼育ケースにラップを貼って、そこに爪楊枝か何かで空気穴を開けてください。このようにしないと飼育ケースの隙間から簡単に逃げて行きます。飼育ケースの置き場所は、直射日光の当たらないところにしてください。直射日光が当たると温度も上がりますし、水分もどんどん無くなっていくので、死んでしまう原因になります。幼虫は葉の裏側にいることがよくあることから、木陰をイメージした少し暗いところがいいと思います。飼育ケースの湿度を高くしないためにも霧吹きで加湿する必要はありません。むしろ、多湿になると病気の原因になります。

アオスジアゲハ幼虫の飼育ケース
アオスジアゲハ幼虫の飼育ケース

 息子の場合、クスノキが容易に手に入るので、カップなどに挿さずそのまま与えています。また、クスノキは2日ほど経ち少ししおれていても幼虫は食べるようです。しかし、幼虫の水分補給は葉っぱからするので、できるだけ新鮮な状態でクスノキを与えることをお勧めします。エサの保存方法は下のボタンからどうぞ。

アオスジアゲハ幼虫の飼育ケース2
アオスジアゲハ幼虫の飼育ケース2

 ラップを貼ってから飼育ケースの蓋で抑えるか、輪ゴムなどで止めておくと逃げる心配は無くなります。また、幼虫にとって最も恐いのは寄生バエです。ラップを貼っておけば侵入される心配もなくなります。寄生バエに寄生された幼虫は体の一部が黒くなります。そうなるとどうすることもできません。

 幼虫が血のようなものを吐いて死ぬ場合は感染症の疑いがあるため、直ぐに他の飼育ケースに他の幼虫達を移してください。もしくは、飼育ケースをよく水洗いしてください。以前、ヒオドシチョウの幼虫を、1つの飼育ケースで70~90匹飼っていたことがあります。朝には元気でエサをモリモリ食べていましたが、夜にいきなり死に始めたので、急いで30匹ほどは助け出して他の飼育ケースに移しました。しかし、助け出したものもどんどん元気がなくなり、次の日には全滅しました。感染症とはこれほど恐ろしいものなのだということを初めて知りました。全滅させないためには、飼育ケースを複数に分けて飼育した方が良いようです。

 幼虫のエサのクスノキは、公園や神社、街路樹などでよく見かける木で、珍しいものではありません。ただ、孵化して間もない幼虫は、柔らかい葉を好みます。人間の赤ちゃんと同じで、柔らかいものしか食べれず、成長するにしたがって硬いものが食べれるようになるのだと思います。特に幼虫が1~2齢の内は、なるべく柔らかい新芽(枝の先の方の葉)の部分を採ってくるようにして下さい。

アオスジアゲハの成長過程

アオスジアゲハの卵
アオスジアゲハの卵

アオスジアゲハは産卵する時には新しい葉に産むそうです。幼虫が若齢の時は新しい葉を好んで食べるからだと思います。卵は薄い黄色です。1㎜ぐらいの大きさです。

アオスジアゲハの卵(数日後)
アオスジアゲハの卵(数日後)

卵はしばらくすると黒くなっていきます。私は初めて見た時には、卵が死んでしまったと思いました。でも、卵の殻から透けて幼虫の身体の色が見えているだけでした。黒くなったらもうすぐ孵化します。

アオスジアゲハの1齢幼虫
アオスジアゲハの1齢幼虫

孵化してすぐの幼虫を1齢幼虫といい、身体は焦げ茶色、頭がオレンジ色で、細かい毛で覆われていて、いかにも毛虫という感じ。大きさ4㎜程度。

右2齢幼虫、左3齢幼虫
右2齢幼虫、左3齢幼虫

最初の脱皮を終えたものを2齢幼虫といい、黒いとげが3対現れる。毛が目立たなくなってくる。色は焦げ茶~緑色の間。大きさは8㎜くらい。

 

2度目の脱皮を終えたものを3齢幼虫といい、身体が緑色になってくるが、緑だから3齢というわかではなさそう。(環境によって多少の変化があるようです)大きさは12㎜前後~。

アオスジアゲハの4齢幼虫
アオスジアゲハの4齢幼虫

3度目の脱皮を終えた幼虫を4齢幼虫といい、頭から数えて3つ目の突起の間に黄色い線がしっかりと現れてきます。大きさは20㎜前後~になります。

アオスジアゲハの5齢幼虫
アオスジアゲハの5齢幼虫

4度目の脱皮を終えた幼虫を5齢幼虫または終齢幼虫といいます。頭から数えて3番目の突起のさきが白くなるため、目玉のようにも見えます。この頃の成長速度は速く、エサを大量に食べます。蛹になる2、3日前から体の色が緑色➡黄緑色に変化します。蛹の色に近い色です。最後に大量のフン(下痢便)をしたら、いよいよ蛹になります。

アオスジアゲハの蛹
アオスジアゲハの蛹

クスノキの葉がないと、幼虫は飼育ケースの壁や蓋で蛹になってしまいます。それでも翅を伸ばしきるスペースがあれば羽化に成功します。もし狭いと思ったら蛹の内に移動させてください。最初は蛹は緑色をしていますが、その内チョウの翅の色が透けて見えるようになります。すると、もうすぐ羽化です。蛹から羽化まで12日前後といったところです。

アオスジアゲハの幼虫の飼育記録

2019/7/23

塾の帰りにクスノキを見たら、アオスジアゲハの幼虫を見つけた。まだ2齢幼虫のようだ。飼育ケース小(160×100×高さ120)にクスノキをそのまま入れて飼育開始。

7/24

昨日見つけた場所の近くのクスノキを探したら、アオスジアゲハの幼虫5匹と卵2個を見つけた。

7/25

アオスジアゲハの幼虫が1匹死んでしまいました。何が原因かはわかりません。

7/28

幼虫の1匹が4齢幼虫になった。

7/30

1匹が体液か何かを吐いて死んでしまいました。ウジが出てこないので寄生バエではなさそう。あと3匹になりました。

7/31

今日も1匹が血のような体液を吐いて死んでしまいました。病気なのだろうか?残りは2匹。

8/2

また1匹が血のような体液を吐いて死んでしまいました。最後の1匹は5齢幼虫になっている。

 8/6

幼虫の1匹の動きが何か変である。蛹になろうとしているのかな?

8/7

とうとう幼虫が蛹になった。緑色をしている。寄生バエにやられていると蛹が茶色に変色する。

8/10

蛹の変化はありません。寄生バエもやられていないようです。

8/16

蛹の中のチョウの模様が見えている。もうすぐ羽化かな?

8/18

ついに羽化した。このページの最初に載せている写真がその個体。綺麗に翅も伸びたのでよかった。

 

今回の飼育で解ったこと、問題点

羽化できたのは、6匹中1匹。途中で次々と血のようなのもを吐いて死んでしまいました。調べたところ原因はウィルス性の感染症の可能性があるとのことでした。1匹目が死んだとき、直ぐに飼育ケースを交換するか洗うべきだったようです。

2019/10/3

今日、塾の帰りにクスノキでアオスジアゲハの幼虫5匹と卵1個を見つけました。飼育ケース小にいれ、クスノキの葉をそのまま飼育ケースに入れました。

10/6

更に、アオスジアゲハの卵2個と幼虫を多数捕って来た。全部で20匹ぐらいになった。

10/7

今日も4齢幼虫を1匹捕まえて来た。

10/9

5齢幼虫が4匹になっていた。今までで幼虫が何匹か死んでしまいましたが、数が多すぎて把握できていません。血のようなものを吐いて死んでいるものはいないようです。

10/11

今日も5齢を1匹追加で、5齢が11匹になる。

10/13

正確に数えてみると、幼虫は全部で22匹、内5齢は11匹。

10/14

幼虫の1匹が蛹になった。

10/15

幼虫の1匹が糸を貼りだした。もうすぐ蛹かな?

10/16

昨日の幼虫が蛹になっていた。これで蛹が2匹。

10/30

しばらく飼育記録を付けれず息子任せにしていました。幼虫の多くが理由不明で死んでしまいました。血のようなものを吐いて死んだのではないそうですが、伝染病の疑いは否定できません。6~7匹が蛹になったそうですが、そのほとんどが寄生虫にやられてしまいました。今残っているのは蛹が2匹のみになってしまいました。

11/2

1匹が羽化しました。まだ、暖かいので逃がすことにしました。

11/4

最後の1匹が無事に羽化しました。この子も逃がすことにしました。

 

今回の飼育で解ったこと、問題点

幼虫が22匹も居たにもかかわらず、今回は2匹しか成虫に育てることができませんでした。問題点としては、寄生虫の処置をしていなかったことが挙げられます。飼育ケースにサランラップなどを貼ってハエなどを入れなくする必要があったと思います。しかし、採取前に卵を産み付けられた可能性もあります。この場合の対処方法は今の所ありません。また、幼虫が死に始めた時にも、直ぐに対応しなかったことで次々と死んでしまいました。短期間で複数死んでしまった場合、伝染病を疑う必要があるようです。

 

2019/11/14

息子が塾の帰りにクスノキでアオスジアゲハの5齢幼虫を1匹捕まえてきた。飼育ケースにクスノキ枝をそのまま入れて飼育開始。

11/19

また同じ場所で5齢幼虫1匹と2齢幼虫1匹を捕まえてくる。合計3匹になったが、この時期に2齢で冬に間に合うのだろうか?(アオスジアゲハは越冬を蛹でする)

11/24

今日から天気予報で寒くなるとのこと。幼虫達は大丈夫だろうか?室内温度は外より数度は高いはずだけれど・・・。

11/25

幼虫達は元気。まだこの程度の寒さなら大丈夫のようだ。

11/26

1匹が蛹になった。

12/7

1匹は蛹に、2匹は5齢になった。2齢の幼虫が何とか5齢までになった。屋外であったなら生きていけただろうか?

12/11

幼虫の1匹が黄緑色になった。もう直ぐ蛹になるのかな?

12/13

黄緑色になっていた幼虫がついに蛹になった。残念なことに最初に蛹になった幼虫の体に黒い点が見える。寄生虫にやられていたようだ。

12/16

最後の幼虫が順調に大きくなっている。

12/27

最後の幼虫が黄緑色になったが、糸を張るのを失敗したようで下に落ちて死んでしまいました。

12/29

死んだと思っていた幼虫が蛹になった。良かった。これですべてが蛹(2匹)に、来年の春が楽しみ。

 

今回の飼育で解ったこと、問題点

11月中旬頃に幼虫のものは越冬するようです。前回の飼育で11月初旬に羽化したものを逃がしましたが、それが成虫にとって良かったかは分かりません。(11月初旬にはほとんどアオスジアゲハを見かけません)もしかしたら、屋内で飼育したために早く羽化してしまったのかもしれません。今回は寒くなっていたので寄生バエが屋内にいるようには思えません。おそらく屋外で卵を産み付けられた可能性が高いと思います。寄生バエに寄生された幼虫を助ける方法があるといいのですが・・・。