ヒオドシチョウ(緋縅蝶)
分布 北海道、本州、四国、九州
特徴 前翅長30~40㎜程度。他のタテハ同様に体が太く、俊敏に飛び回ることができます。翅の表は緋色(赤に近い濃いオレンジ色)に黒い紋がまばらにあります。また、翅の外縁には水色?が入り美しい。翅の裏側は落ち葉のような色合いです。
生態 年に1回発生します。寿命は長く約1年あり、初夏に発生した個体がそのまま越冬して春に産卵します。3~6月頃と9~11月頃に見られ、夏には見られず、どこにいるのか解かっていないそうです。成虫は春にエノキの若葉に産卵し、幼虫はそれを食べます。他にヤナギなども食べます。低地や山地の雑木林で見られます。成虫は、クヌギ、コナラなどの樹液がエサとなります。花の蜜も吸うようです。オスはなわばり行動(ルリタテハのような)をするそうです。また、擬死(死んだふり)をする変わったチョウです。
飼育 擬死(死んだふり)をするので、その時にエサを与えることができます。擬死したままでエサだけは飲む姿は滑稽です。モンシロチョウより大きいので、ストロー(チョウの口)を伸ばしてエサを与えるは難しい方ではありません。
上の写真は死んだふりをしているヒオドシチョウです。この状態で何分もの間死んだふりをしますが、所々が少し動くので生きていることが解ります。擬死すること自体蝶には珍しく、これがこの蝶の特徴です。
下の写真は羽化して間もないヒオドシチョウです。翅が綺麗な状態です。このページ最初の写真は春に捕まえたものです。1年近く生きて翅がボロボロです。
ヒオドシチョウの飼育環境
飼育ケースは、なるべく大きなものにして下さい。どんな昆虫でも同じですが、昆虫にかかるストレスを少しでも軽減するためです。また、チョウは羽ばたいて暴れた場合、飼育ケースが小さいほどケースの壁に衝突してダメージを受けます。それがそのままチョウの命を削っていくからです。そこで、飼育ケースの中には、チョウの止まるための止まり木を入れ、昆虫ゼリーや砂糖水も一緒に入れて置きます。飼育ケースが幅30㎝奥行18㎝高さ20㎝のものでもヒオドシチョウにとっては小さいようです。飼育ケースが小さい場合、ケースの壁に当たって体力を削っていってしまい、それが原因で死んでしまうこともあります。私の場合、段ボールで飼育ケースをすっぽり覆い、夜を演出して蝶の体力が無くならないように調整しています。真っ暗でもエサを自分で摂ってくれることもあります。出来ることなら飼育ケースの中にエノキの枝をいれると卵を産んでくれたかもしれません。
下の写真はゴマダラチョウですが、同じエノキに産卵し樹液をエサとする蝶なので、飼育環境は全く同じです。昆虫ゼリー、砂糖水をティッシュに染み込ませたもの、スイカを入れています。
ヒオドシチョウは日陰を好む蝶などで、飼育ケースは日陰の風通しの良い場所に置いて下さい。
2020年4月の飼育では、5日目からダンボールで作った飼育ケース飼育しました。飼育ケースの大きさは、縦56㎝✖横46㎝✖高さ100㎝です。しかも、ダンボール飼育ケースに移した次の日に産卵したので、飼育ケースの狭さからくるストレスで、飼い始めの4日間は産卵しなかったのかな?と思いました。ダンボール飼育ケースの製作自体は簡単なのでお勧めです。
ヒオドシチョウが産卵するようにするには、幼虫の食草を採って来なければなりません。エノキという木の葉がエサになります。
幼虫のエサのエノキは、公園や神社、街路樹などでよく見かける木で、珍しいものではありません。
ヒオドシチョウのエサ
ヒオドシチョウは樹液、花の蜜の両方を飲むので、昆虫ゼリーや砂糖水で代用できます。作り方はこのホームページの「飼い方、育て方」内の「蝶の飼い方、育て方」を参考にして下さい。他にはカルピスなどのジュースを薄く薄めてもいいそうですが、私はまだ試していません。ただ、濃すぎた場合、蝶の口のストローで詰まって死んでしまうことがあります。
上の写真のように、蝶のクルクル巻きのストロー(蝶の口)の中心に、先の細いものを差し込みます。息子はクリップを伸ばしたものがやり易いそうです。
後は前方にゆっくりと伸ばして、エサのところにストローを導いてあげます。すると、後は自分で飲み始めます。
ヒオドシチョウの飼育の注意点
捕まえた日は、必ずエサを摂らせて下さい。そうしないと、次の日に死んでしまうことがよくあります。2、3度挑戦してダメだった場合、飼育ケースの中にエサも一緒に入れてあげましょう。後は自分で飲んでくれることを祈るしかないです。基本的には毎日エサを飲ませる作業をして下さい。元気が十分にあり飛び回ってしまう時には、無理に飲ませず、エサを飼育ケースの中に入れておけばいいと思います。ただ、弱ってきているようなら何としても飲ませて下さい。ヒオドシチョウは擬死して動かなくなることがあるので、その時に飲ませることができます。擬死状態でもストロー(蝶の口)をエサに導いてあげると、死んだふりをしたまま飲んでくれます。エサやりの回数は室温、蝶の活動状態によって変えなければなりません(このホームページの「飼い方、育て方」の「蝶の飼い方、育て方」の所に詳しく書いてあります)。私の場合、夜に1度のエサやりをしていますが、その時に健康チェックもしています。また、エサを与える場所は逃げられないように屋内でしましょう。屋内でも直ぐに捕まえられる狭い場所か障害物の少ない場所がいいでしょう。
ヒオドシチョウは、死んだふりをしている時にエサを飲ませようとすると、体をずっと支えていなければなりません。そこで、上の写真のように、厚紙で挟んで体を支える道具を作ると、エサやりが楽になります。
ヒオドシチョウの飼育記録
2020/3/21
旅行先の駒ヶ根高原の山の中で、ヒオドシチョウを嫁さんが捕まえました。最近は、自宅(岐阜県岐阜市)近くでは見られなくなりました。自宅に持って帰り、飼育をすることにしました。一番大きな飼育ケースに止まり木と、昆虫ゼリー、ティッシュペーパーに水を含ませたものを入れました。
死んだふりをしたので、無理やり昆虫ゼリーのケースの縁に止まらせました。ちょっとヘンテコな格好で吸蜜しています(上の写真)。飲ませた後は、飼育ケースに入れ、ダンボール箱で飼育ケースを覆い中を暗くしました。
3/22
元気はあるようですが、飼育ケースに手を入れると死んだふりをします。この状態でエサを上げるには、蝶を支えてあげなければならないので、息子は面倒くさそうでした。
3/25
エサの時、ヒオドシが飛んで息子の手の甲に止まりました。ん?この格好はルリタテハの縄張り主張をしている時に似ています。
3/27
ヒオドシチョウは元気、エサやりの時には、いつもどうり死んだふりをする。昆虫ゼリーが干からびて、表面の水分がなくなっているようなので、昆虫ゼリーに砂糖水を加えるか、昆虫ゼリーを裏返しにして、水分のあるところを出すように息子に伝える。
3/29
昆虫ゼリーが干からびたままになっている。息子は、私が言ったようにやらなかったようなので、私が昆虫ゼリーを裏返して、水分のあるところを出した。息子は意味が解っていなかったようです。
4/1
朝見てみると動きが止まっていた。死んだふりかなと思っていたら、本当に死んでいました。
今回の飼育で解ったこと、問題点
今回は、飼育12日目で死んでしまいました。原因はハッキリとはしませんが、寿命で死んだ訳ではなさそうです。飼育ケース内は止まり木とエサの容れ物を入れただけの殺風景な状態でした。ストレスでしょうか?また、昆虫ゼリーの表面が干からびていたこともあったので、十分にエサを摂っていなかったのかもしれません。
2020/4/11
午前中に近所の古墳に行きました。ヒオドシチョウ、ツマキチョウ、ウスチャコガネ♂、ホソミイトトンボ♂を捕まえました。
上の写真は、死んだふりをしているヒオドシチョウ。ヒオドシチョウは飼うことにしました。でも、去年から生きている個体なので、翅の損傷が酷い。今回は昆虫ゼリーではなく、砂糖水で飼育しようと思います。
4/13
ヒオドシチョウはいつも死んだふりをするので、上の写真のようにエサを与えるようにしています。死んだふりをしていてもエサは飲むので面白い蝶です。
今日、父の力作のダンボール飼育ケースが完成した。明日、エノキを採って来たらそこに引越しします。
4/14
エノキを採ってきたので引越しをしました。
中は広々!ヒオドシチョウと一緒に、アゲハ1匹、テング1匹、ツマキチョウ1匹も飼うことに。産卵してくれるといいのだけど。
ダンボール飼育ケースの作り方はHPの”困った昆虫のあれこれ”の所に紹介します。
4/15
昨日ダンボール飼育ケースに引越ししたばかりなのに、ヒオドシチョウが産卵していました。
飼育ケースでは狭くてストレスで産まなかったのかも。
4/16
ヒオドシチョウは今日も元気。でも、近づくと死んだふり。一緒に飼っていたテングチョウが今日卵を産んだ。ヒオドシ、テングの卵はエノキを入れ替える時、他の容れ物に移しました。
4/18
あれから卵は産まなくなった。ゴマダラチョウは何度かに分けて産卵していたけど、ヒオドシ、テングは1度で全部産んでしまうのだろうか?
4/21
ヒオドシにスイカを与えてみた。死んだふりをしながら飲んでくれた。
4/22
ヒオドシチョウの産んだ卵が孵った。90~100匹いるかもしれません。ヒオドシの幼虫は集団生活をするそうです。下の写真の下側に、卵の殻が付いた枝が写っています。これだけいると私でも引きます(-_-;)。息子は平気だそうです。
4/24
ヒオドシチョウはあれから産卵しなくなりました。つまり、もう子孫繫栄の役目を果たしたことになります。息子に、もう直ぐ寿命が尽きるのではないだろうかと伝えると、明日逃がして来ると言っていました。
4/25
近くの古墳で逃がすことにしたそうですが、飛んで逃げる力がなさそうだったので、そのまま持って帰ってきたそうです。夜には、いつも通りに死んだふりをしながらエサを吸っていました。
4/29
あれから、日中はエノキの枝や、ダンボール飼育ケースの網に止まったりして過ごし、夜には死んだふりをしながらエサを飲むという1日を過ごしているよう。やはり、飼育ケースが広いのがいいのかな?と思ったりします。
5/3
ヒオドシチョウの幼虫の食欲が半端ない!今4齢幼虫?がちらほらいるようで、数も60~80匹はいるような気がします。カットネギを入れるプラ容器で飼っていますが、そこに一杯にエノキの葉を入れても1日持たない!エサを確保するのが大変です。
ヒオドシ幼虫のお母さんは、今日も変わらず死んだふりして元気なようです。
5/5
ヒオドシ幼虫が大量死しました。60~80匹が朝には元気だったのに、夜になったらドンドン死んでいきました。生きているものだけ別の場所に移しました。全部で30匹程度になってしまいました。でも、ほとんどが元気がなくエノキの葉をろくに食べません。カットネギのプラ容器にラップを貼って輪ゴムで止めていました。そのラップには空気穴を開けていますが、10個程度針で開けました。もしかしたら、酸欠で死んでしまったのかもしれません。
5/6
別の場所に移した幼虫達も全滅しました。中には血のような体液を吐いて死んだものもいました。酸欠の場合、このような全滅の仕方はしないように感じます。おそらく、感染病と思われます。複数の容れ物に分けて飼育すればよかった。
5/10
ヒオドシチョウを飼育して約1か月が経ちました。まだヒオドシ母さんは、元気に死んだふりをしながらエサを摂ります。
5/16
ヒオドシチョウの足がとれてしまっていた。もう立てない。なんとかエサを摂らせようとしましたが、結局飲みませんでした。
5/17
ヒオドシチョウは生きてはいますが、もうエサを飲む元気もないようです。
5/18
とうとう死んでしまいました。
今回の飼育で解ったこと、問題点
今回は、1か月以上飼育できました。また、卵も100個くらい産んでくれました。卵を産み終わってなお1か月生きてくれました。ほぼ寿命が来たといっていいのではないでしょうか。ダンボール飼育ケースという飼育環境は、ヒオドシチョウなどの日陰を好む蝶にとっては、適度な光と影のある飼育環境なので適しているようです。対して、シロチョウやアゲハ、大型のアゲハ(ナガサキアゲハなど)にとっては狭いのか?日光が差し込んでくるのが問題なのか?長生きしません。エサはスイカなどを飲ませた蝶が次の日に死ぬようなことが起こったので、途中からはずっと砂糖水にしました。ヒオドシチョウの産卵には、飼育ケースの広さも必要かもしれません。長く生きてくれてありがとう。
2020/6/5
近所の古墳でヒオドシチョウを捕まえました。息子曰く、お腹が大きいのでメスとのことです。私には判別できません。
やはり、死んだふりをします。息子曰く、翅に隠れていた触角が翅から出てくると、死んだふりを止めて動き出す前兆だそうです。今日も死んだふりをしながらエサを吸っていました。
6/9
最近は暑い日が続いています。蝶の何匹かは死んでしまいました。おそらく、暑さのせいだと思います。ヒオドシチョウは大丈夫そうです。
6/17
ヒオドシチョウは飼い易い蝶のようです。エサを飲ますのも飛び回らないので楽です。適応温度も広そうです。今日も死んだふりをしながらエサを飲みました。
6/22
ヒオドシチョウの普段は、ダンボール飼育ケースの天井に張り付いて過ごしています。エサを与える時触ると、すぐに死んだふりをします。今日も元気そうです。
6/27
ダンボール飼育ケースを大掃除した時、ヒオドシチョウとラミーカミキリに逃げられてしまいました。どちらも探しても見つかりません。すき間に入り込んでしまったのかもしれません。
6/28
ヒオドシチョウもラミーカミキリも見つかりました。元気です。
7/3
もう直ぐ飼い始めて1か月になります。今はタマムシ1匹とヒオドシチョウをダンボール飼育ケースで飼っています。今日も元気です。
7/8
息子がまたヒオドシチョウをロストしたようです。明日には見つかるといいのですが・・・。
7/9
ヒオドシチョウが見つかりました。元気そうです。
7/15
まだまだ元気。本当に飼い易いと思います。
8/5
ヒオドシチョウは安心して飼っていられるので、どうしても書き込みが散漫になってしまいます。今日で飼育が2か月になります。ただ、エサを与える時に手で翅をつまむので、そこの鱗粉が全く無くなってきています。
8/20
今日もヒオドシチョウは元気に死んだふり。ヒオドシチョウは死んだふりをする面白い蝶ですが、色が比較的に地味であまり飼おうと思う人は少ないようです(このページのアクセス数がほとんどありません)。温度変化にも強く、飼い易く、長生きもします。1度飼ってみると楽しいと思うのでお勧めです。
8/24
今日、ヒオドシチョウが花瓶の中で溺れて死んでいました。サランラップを貼るとか蓋をするとかして、花瓶に入れないようにするべきでした。今日で飼育開始から2か月と20日になります。
今回の飼育で解ったこと、問題点
ヒオドシチョウはやはり飼育し易く、毎日エサを飲んでくれれば長く飼育出来ます。ただ、今回は広いダンボール飼育ケースで飼っているので、もっと狭いところではどうかは解りません。日陰を好む蝶は、自分でエサを摂ってくれたり、翅がボロボロになりにくく、全体的に飼い易い印象があります。死亡原因は花瓶に入っての溺死でした。花瓶に蓋をしたりするのが面倒くさいのでサボっていました。こういう小さな気遣いの欠如が、時には昆虫の死につながってしまいます。