ヒラタクワガタの飼い方、産卵のさせ方

ヒラタクワガタ オス
ヒラタクワガタ オス53㎜

ヒラタクワガタ

特徴 体長オス20~75㎜メス20~40程度、体色は黒色もしくは黒褐色で艶があります。名の通り体型が平たく、よく木の隙間に入り込みます。そのため木を蹴って捕獲しようとしても捕れません。オスの大顎は太くがっしりとしており、内歯がギザギザと並んでいます。メスはコクワガタとよく似ていますが、体の光沢と前脚の脛節が太く湾曲しているところで区別できます。離島などに亜種が多く存在するため、国産ヒラタクワガタ、本土ヒラタクワガタなどと呼ぶことがあります。

生態 6月頃~9月頃に見られます(岐阜県南部では)。森林や河川敷に生息し、湿度の高い環境を好みます。夜行性で昼間に木の隙間などに入り込んでいます。気性が荒く、縄張り意識も強いです。メスを殺してしまうことがあるのでペアリング(交配)の時には注意が必要です。成虫のエサはクヌギ、コナラ、ヤナギなどの樹液、幼虫は広葉樹の材部です。成虫の寿命は1年~3年です。

飼育 成虫の飼育は簡単です。産卵セットを組まないと産卵しないことが多いです。

ヒラタクワガタ メス
ヒラタクワガタ メス

 ここでは、産卵を視野に入れたヒラタクワガタの飼育セットの組み方を書くことにします。成虫を飼育するだけの場合は、HPの”飼い方、育て方”の”クワガタの飼い方”を参考にして下さい。

いつ頃に産卵セット組むの?

 採取したら直ぐに産卵セットを組む方がいいでしょう。早い方がお勧めです。8月末から9月に入るとクワガタはどんどん死んでいきます。ヒラタクワガタの成虫の寿命は1~3年ですが、採取した個体の場合あと何年生きれるか判りません。捕まえたら直ぐに産卵セットを組んだ方が、産卵をするチャンスが多くなります。また、産卵環境が気に入らないようならば、もう一度産卵セットを組み直すこともできます。真夏の前に採取出来たなら、真夏の前に組みましょう。産卵には28℃以下が好ましいようです。

ヒラタクワガタの産卵セットの組み方

 ヒラタクワガタは木材にもマットにも産卵するタイプです。木材はクヌギ、コナラなどです。私の場合は、100均で売っているものを使っています。材を買ってきたら、バケツに水を入れその中に材を沈めて加水処理をします。材だけだと浮いてしまうので、水を入れたペットボトルなどを材の上に置いて完全に沈ませます。沈めておく時間とその後の乾燥時間は、30分沈め4~5時間日陰干しする人もいれば、半日沈めて1日干す人などまちまちです。私は4~5時間沈めます。その後6~8時間日陰で干します。その後、材の皮をドライバーなどの先のとがったものですべて剥いでいきます。材のオレンジ色の部分も削り落とします。穴(シイタケ菌のコマ打ち)に発泡スチロールなどが詰めてある場合、それもえぐり取ります。

木材の剥いだ皮
木材の剥いだ皮

マットの選び方

 次にマット(飼育する時に使う土のようなもの⇐クヌギなどを朽木を粉砕したものです)選び方ですが、成虫飼育用、クワガタ用、カブト用などいろいろなものがあります。まずは表示をよく読みましょう。

成虫飼育用か幼虫飼育用か

・成虫、幼虫飼育どちらでも使えるもの又は幼虫飼育用⇒幼虫飼育用の文字が書かれているものは、クヌギ、コナラなどの幼虫のエサになる広葉樹を粉砕したものです。こちらでないと産卵も幼虫の飼育もできません。

・成虫飼育用⇒成虫飼育用のものは防虫などを目的にし、針葉樹などを粉砕したものが多いです。幼虫は針葉樹は食べれませんので産卵、幼虫飼育には使えません。

どのような色のマットを選べばいいのか

 幼虫飼育用マットで困るのがマットの色です。木の色に近いものから真っ黒なもの、クワガタ用、カブトムシ用などでマットの色が違ってきます。色の違いは大まかに言ってマットの微生物による発酵の進み具合だと思って下さい。

1次発酵マット(木の色に近い)⇒2次発酵マット(焦げ茶)⇒完熟マット(真っ黒)のようになり、完熟マットが最も発酵が進んだものになります。

 一般のクワガタの幼虫は2次発酵マットを選びましょう。幼虫にはある程度発酵が進んだものがエサとして適しています。または、クワガタ用と書かれてものでもいいです。完熟マットまたはカブトムシ用と書かれたものは、カブトムシ、ミヤマクワガタなどに使います。判らない場合店員さんに聞くのが一番です。

 マットはペットショップ、100均のどちらでも手に入りますが、ペットショップは品揃えが豊富で、店員さんもレベルが高いので、初めての方はそちらで質問をしながら選ぶのが無難だと思います。

発酵マットのガス抜き

 発酵マットの封を開けた時、強烈な臭いがすることがあります。この場合、発酵マットはガス抜きと呼ばれる作業が必要になります。風通しの良い場所で衣装ケースや新聞紙の上にマットを出し、1~7日程度臭い強烈な臭いが無くなるまで干します。この時、コバエなどの虫が入らないように網などを掛けておいて下さい。この工程を行わないと、幼虫がマットに潜らなかったり、死んだりするので注意して下さい。

 ヒラタクワガタの産卵には、2次発酵マット(焦げ茶色)またはクワガタ用マットと書かれたマットを選びます。

硬く固めた飼育用マット
硬く固めた飼育用マット(3~5㎝)

 次に幼虫飼育用マットに加水します。飼育ケースの中でマット混ぜながら徐々に水を加えていきます。ときどき片手でマットを強く握って団子を作ります。その団子がバラバラと崩れるようならまた水を加えます。そして、握った団子がある程度の固まるようになるまで続けます。さらに水を加え過ぎると握った時、ジュッ、ジュッと音を立てながら指の間から水が染み出してきます。この場合は水分を加え過ぎなので、マットを加えて調整してください。私は場合、飼育ケースの2/3埋まる程度のマットを袋から出し、そこで加水してから一部を取り出し、残ったものを上の写真のように3~5㎝程度マットを硬く固めます。カチカチに固めて下さい。

産卵材を利用して底のマットをカチカチに固める
産卵材を利用して底のマットをカチカチに固める

 底のマットを固める時、オロナ〇ンCなどの瓶の底や産卵材の平な部分を使って押し固めるとやり易いと思います。この時に飼育ケースを割らないように気を付けて下さい(私は何度も割っています)。新聞を折りたたんで押さえる底に当てると割れにくくなります。上の写真は産卵材で押さえています。

皮を剥いだ木材
皮を剥いだ木材

 上の写真はマットの上に皮を剥いだ材を置いた状態です。ここに先ほど加水した残りのマットを入れていきます。量は材が完全に隠れるまで入れます。軽く固める程度にして下さい。

残りのマットを入れた飼育ケースの状態
残りのマットを入れた飼育ケースの状態

 この状態で1~2日間産卵セットを置く場所で放置します。再発酵して熱を持つことがあるからです。再発酵していないことを確認出来たら、ここに転倒防止用の木や葉っぱ、昆虫ゼリーと成虫を入れて完成です。

ペアリングについて

 繁殖をさせるために昆虫を交配(交尾)させることをいいます。その中で、人の手で交尾を促すハンドペアリングと、オスとメスを同じ飼育ケースに入れ、自然に交尾させる同居ペアリングがあります。ハンドペアリングは気の荒い種類(ヒラタクワガタなど)でメスを殺してしまう危険性がある場合に行います。オスの背中を持たまま、メスの上に乗せると後は自分から交尾を始めることが多いです。また、オスの大顎を縛って同居させる方法もあるようです。ただ、採集した天然個体の場合、既に交尾が済んでいるものが多く、そのまま産卵できるものが多いようです。

産卵の時に与えるエサ

 産卵用昆虫ゼリー、高タンパクなどの表示のしてあるエサがいいでしょう。普通のものより少々お高いです。普通の昆虫ゼリーでダメということはないのですが、産卵には非常にエネルギーを使いますから食べ物でも補助してあげましょう。

産卵のために飼育ケースを置く環境

 薄暗く静かな場所に置いて下さい。特に子供は観察したくて我慢できません。息子もやはり気になってしょうがないようで飼育ケースをよくいじっています。人間が飼育ケースを持ち上げたり揺らしたりすることは、昆虫にとっては大きな地震が起きていると同じような状態になると思います。そんな落ち着かない状態で安心して産卵できるでしょうか?だから、エサやりと霧吹きでの加湿以外出来るだけ触らないように心掛けましょう。オスを同居させていた場合、1週間も同居させれば交尾は済んでいるので取り出しましょう。静かな落ち着いた場所を造るためには、オスは邪魔な存在以外の何物でもありません。(何か人間にも通じるところがありますねぇ・・・)

産卵の目安

 産卵しているかどうかの目安は、メスが材を削っているかで判断します。ヒラタクワガタは産卵するため材を削っていきます。材を削った後、下の写真のような卵を産みます。メスは卵を食べてしまうことがあるので、表面から拾える卵は拾っても構いませんが、飼育ケースを触ることは産卵の邪魔することと同じなので出来るだけそっとしておいて下さい。卵を拾う時には手で触らず、ヨーグルトを食べる時などに使うプラスチックや紙のスプーンを使って下さい。

クワガタの卵
クワガタの卵

割り出しの時期

 割り出しとは、孵化した幼虫を材の中から取り出す作業です。そのままにしておくと、共食いをしたり傷つけ合ったりするので、個別管理をすることで生存率を上げます。メスを産卵用飼育ケースに入れてから1カ月程度でメスを取り出し、その後2週間~1か月ほど待ち割り出しをします。。それまでは、見たくても我慢して静かにそっとしておいてあげましょう。子供達よ我慢です。息子は幼虫が共食いをするからと言ってよく飼育ケースをいじっていましたが、共食いをする個体数より、落ち着いて卵を産めないがために生まれない個体数の方が多いと私は思います。

割り出しの方法と個別管理

 さあ待ちに待った割り出しです。新聞紙を広げた上に飼育ケースのマットをすべて広げましょう。産卵された材を食痕(幼虫が食べた痕)を頼りにラジオペンチやドライバーなどを使い割っていきます。ただ、これが難しい。私もよく幼虫を潰してしまいました。丁寧に気を付けてやりましょう。また、幼虫や卵には手で直接触らず、ヨーグルトなどを食べる時に使うプラスチックや紙のスプーンを使いましょう。この後、マットの中も丁寧に探していきます。探し終わった材やマットは1週間くらい時間をおいてもう1~2度は探しましょう。よく新しい幼虫が見つかります。探し出した幼虫は1匹づつ個別に管理しましょう。初齢や2齢(1度脱皮したものを2齢という)の幼虫は共食いをするようです。個別管理というと菌糸ビンが使われます。ペットショップなどで売られていますが1本1000円程度します。大型のクワガタを羽化させたい場合に使ってください。私の場合、ペットボトルの上部を切り取ったものを菌糸ビンの代わりに使います。中には普通の幼虫飼育用マットを入れ、蓋の代わりにサランラップを輪ゴムで止めています。あと空気穴を針などで開けてください。これを屋内で飼育しています。大きさは望めませんが飼育はできます。

クワガタをペットボトルで飼育
クワガタをペットボトルで飼育

幼虫の世話

 基本は1週間~2週間に1度霧吹きでの加水作業は忘れないで下さい。また、時間が経つと幼虫が沢山フンをしてケース内が汚れていきます。外から見て中がフンで固まった状態が見えて来たら新しいマットと交換して下さい。また、マットからコバエがわくことがあります。この対応方法は”困った昆虫のあれこれ”でまとめておきます。

幼虫の個別管理の場所

 私の場合、屋内で管理をしています。下の写真のように発泡スチロールにペットボトルに幼虫を入れて飼育しています。幼虫も成虫も冬に屋外で管理する場合、なるべく大きな飼育ケースに出来るだけマットを敷き詰めて下さい。屋外ストッカーなどに入れるなどして温度が下がり過ぎないように工夫して下さい。凍結すると死んでしまいます。

クワガタの幼虫屋内管理
クワガタの幼虫屋内管理