ナナフシの飼育

ナナフシ(ナナフシモドキ)
ナナフシ(ナナフシモドキ)

ナナフシ(ナナフシモドキ) 七節

分布 本州、四国、九州

特徴 体長70~100㎜程度。4月下旬~11月頃に見られます(岐阜県岐阜市)。一般にナナフシと呼ばれるのはナナフシモドキを指します。細長い体で木の枝に擬態した昆虫です。翅はなく、緑色または褐色で非常にみつけづらい。メスだけで単為生殖(メスが単独で子をつくること)をおこなうためオスは滅多にいないようで、オスを見つけたら自慢できるぐらい珍しいです。幼虫は脚が縞模様になっています。ナナフシのなかでもナナフシモドキとエダナナフシがよく捕まりますが、触角がナナフシモドキは短く(下の写真)エダナナフシは遥かに長いことで区別できます。

生態 夜行性。エノキ、ケヤキ、サクラ、コナラなどの葉を食べます。雑木林などで見つかります。卵→幼虫→成虫という不完全変態(蛹にならない変態)をします。脱皮のたびに脚が再生しますが、1回の脱皮で無くなった脚(脚の根元からとれてしまった場合)完全に再生することは難しいようです。何度かの脱皮を経て再生します。成虫になってからは再生できません。植物の種子に似た卵を産み、次の年の春に孵化します。

飼育 エサがエノキ、サクラなど個体に好みの差があるようですが、捕って来た場所にあったエサを採ってくるといいでしょう。簡単に飼育出来ます。

産卵 長く飼育していると自然に産んでくれます。単為生殖のため一匹でも産卵は可能だと思います(今のところ複数でしか飼育していません)。

孵化 卵の管理をしっかりしなかったので失敗しています。

ナナフシ(ナナフシモドキ)
ナナフシ(ナナフシモドキ)

 ナナフシ(ナナフシモドキ)の幼虫は、下の写真のように、手に縞模様があります。

ナナフシ(ナナフシモドキ)幼虫
ナナフシ(ナナフシモドキ)幼虫

 ナナフシのエサは、エノキ、ケヤキ、サクラの葉などです。バラ科の葉も食べる(試したことはありません)と言われていますが、手に入りにくいと思います。私がナナフシを捕まえたときはサクラの木のそばで捕まえることが多いです(セミの幼虫を探している時などに見つけます)。エノキは公園や神社によく生えているので、手に入りやすいと思います。また、私の周り(岐阜県岐阜市)では、街路樹の間や植え込みの間に勝手に生えている場合もよくあります。

飼育に必要なもの

1.エノキの枝を刺すカップ

2.エノキの枝

3.脱脂綿または園芸用オアシスなど

4.飼育ケース

 まず、カップに脱脂綿を入れ、水を入れます。園芸用オアシスは好きな状態に枝を刺せるので、枝を真っ直ぐに立てたい場合などに便利です。

カップに湿らせた脱脂綿を入れる
カップに湿らせた脱脂綿を入れる

 それにエノキの枝を挿します。

ナナフシの飼育道具2
カップに挿したエノキの枝

 これを紙を敷いた飼育ケースに入れます。

ナナフシの飼育道具3
飼育ケースにエノキの枝を入れる

 紙を敷くのは、ナナフシがよくフンをするのでかえやすくするためと、卵を産んだとき分かり易くするためです。

飼育中のナナフシ
飼育中のナナフシ

飼育で注意すること

 ナナフシのエサ(エノキなど)を出来るだけ新鮮な状態にしてあげてください。私は2日に1度程度の割合でエノキを替えるようにしています。。多少しおれてしまってもナナフシは食べてはくれます。

 これはまだ確認中ですが、ナナフシがいきなり死んでしまうことがあります。私はこの原因の多くは水分不足からだと思っています。エサを新鮮な状態で与えれば水を与えなくてもいいのではと考えています。夏場の水分補給が今のところの課題になっています。水飲み場を作っても飲んでいるようには思えません。

 個体によってはさくらの葉を好むものもいると思います。ナナフシを捕まえた場所をよく見て、回りにどんな木があったのか観察してください。

 飼育ケースのサイズは出来るだけ大きなものを使ってください。どんな昆虫もそうですが、狭いとストレスを感じます。ストレスが多ければ寿命が短くなると思います。ナナフシはストレスに対して弱いとは感じませんが、プラスチックの飼育ケース小(160×100×高さ120)の物でも飼育出来ますが、ナナフシ(成虫)大きさに対して小さいように感じます。

 飼育ケースの置き場所は、私の場合、直射日光の当たらない木陰くらいの明るさの場所に置いています。ナナフシがいるのが木陰や茂みだからです。

 エノキなどのエサが簡単には手に入らなかったり、毎日採って来るのが面倒な方は次の実験を参考にして下さい。エノキの長持ち実験をしたものです。また、より新鮮な状態でエサを与えれる方法にもなります。

 下記のナナフシの飼育記録は、上記の飼育方法を考えた過程のものです。読んで頂けると私の失敗などから、皆さんの飼育に役立つかもしれません。

ナナフシの飼育記録

2019/8/5

 セミの幼虫を、近所の古墳に捕まえに行き、ナナフシを捕まえました。タマムシと同じ飼育ケースに入れて飼育開始。(エノキがあるので)

8/6

 ナナフシは元気。自分でエノキを食べているようです。多少しおれていても食べてくれているようです。

8/7

 タマムシと一緒の飼育ケースだが、ケンカすることもないようです。今日も元気。

8/12

 1日半ほど、面倒を見れませんでしたが、問題ないようです。水分も特に補給する必要がないようです。(今日、タマムシは4匹も死んでいました)多少世話をできなかったとしても死なないし、しおれた葉っぱでも食べてくれるので、飼育しやすいです。

8/17

 今日も元気。暑くても平気なようです。産卵とかしないかな?

8/20

 今日も元気。産卵はしていないようです。何が足らないのだろう?そもそも、この個体は産卵できるのだろうか?ナナフシは単為生殖(メスのみで子をつくることができる)のはずだけど・・・。

8/25

 今日覗いてみたら、ナナフシがエノキの葉から落ちて動かなくなっていました(死んでしまいました)。昨日まで変わったようすはなかったのに。何が原因?

 

今回の飼育で解ったこと、問題点

 ナナフシは飼育が簡単な昆虫のようです。エサも多少しおれても食べてくれるし、暑さにも他の昆虫(タマムシや蝶達)に比べ強いようです。ただ、死んだ原因は水分不足であったかもしれません。どのように水分を与えるか考えます。

2020/4/27

 近所の古墳で、ナナフシ(ナナフシモドキ)の幼虫を1匹捕まえました。ちょうど、ダンボールで飼育ケースを作ったので、その中で蝶と一緒に飼育します。

ナナフシ(ナナフシモドキ)の幼虫
ナナフシ(ナナフシモドキ)の幼虫

4/28

 ヒオドシチョウを一緒に飼っていたので、エノキの枝はわざわざ採りに行かなくて良かった。今日は元気そうです。ただ、ウバタマムシも一緒に入れてあるので、ウバタマムシが何かしないかちょっと心配です。

4/29

 幼虫の1匹目を捕った同じ場所で、もう1匹捕まえることができました。現在2匹。1匹目も元気です。小さい(体長3㎜くらい)ので何処にいるのか探しにくいです。

5/2

 また1匹同じ場所で捕まえました。全部で3匹になりました。

ナナフシ(ナナフシモドキ)の幼虫2
ナナフシ(ナナフシモドキ)の幼虫2

5/10

 今日、ナナフシの体長を測ったところ、40㎜になっていました。3匹とも元気。

ナナフシ(ナナフシモドキ)の幼虫3
ナナフシ(ナナフシモドキ)の幼虫3

5/14

 昆虫のエサを採りに古墳に行ったら、また1匹ナナフシを捕まえました。全部で4匹になりました。

5/16

 ナナフシが脱皮していた。残念なことに、ダンボール飼育ケースのガムテープに脚がくっついて1本とれてしまった。幼虫は脱皮の時に脚が再生するので、次の脱皮までは5本脚。

ナナフシの抜け殻
ナナフシの抜け殻
ちょっと成長したナナフシの幼虫
ちょっと成長したナナフシの幼虫

5/22

 今日も昆虫のエサを採りにいったついでに探してみたら、ナナフシを捕まえることができました。今、全部で5匹います。エノキが萎れていても食べてくれるので、毎日エサを採りに行く必要はありません。

5/30

 2匹脚のとれたナナフシがいました。数日前に脱皮した方は脚が再生しました。今日脱皮した方は脚が上手く再生できなかったようです。まだ脚に縞模様があるので、成虫ではないと思うので、次回の脱皮で脚が再生することを期待します。

脚が上手く再生できなかったナナフシ
脚が上手く再生できなかったナナフシ

6/6

 ナナフシの1匹が前脚、中脚の4本がとれてしまったものがいました。脱皮に失敗したのか?他の昆虫(一緒に蝶、ラミーカミキリなどを飼っています)にやられたのか?枝に摑まることができないので、ナナフシの目の前にエノキの葉を置いておきました。

6/8

 脚が4本とれていたナナフシは、やはり死んでしまいました。残りは4匹になりました。1匹のナナフシが、脚が3本になっているものがいます。なんとか枝には摑まれるようです。まだ幼虫なので、次の脱皮で再生できるといいのですが・・・。

6/11

 ナナフシの1匹が見あたらないので探したら、下に落ちていた葉っぱの間で死んでいました。最近は学校が始まったため、エノキをこまめに替えていないようです。葉っぱがカサカサになっていました。息子に、ナナフシは水分をエノキからしか補給する方法がないことを伝えました。

6/13

 雨に濡れたエノキの枝を入れたところ、ナナフシがその水滴を飲んでいたと息子が言っていました。そこで、蝶の吸蜜用のエサ入れの他にナナフシの吸水用のものを作りました。スーパーの魚用の発泡スチロールトレイに、ティッシュペーパーに水を含ませて置いておくことにしました。トゲナナフシなどはこのようにしてエサとは別に水を与えるといいそうなので、ナナフシも同じではないかと考えました。今はナナフシは3匹になりました。元気はいいようです。

ナナフシが70㎜に
ナナフシが70㎜に

6/14

 今日ナナフシを測ってみたら、大きいものだと70㎜くらいになっていました(上の写真)。3匹とも元気。

脱皮で脚が完全には再生していないナナフシ
脱皮で脚が完全には再生していないナナフシ

6/21

 脚が3本のナナフシが、昨日脱皮したようです。ただ、脚が完全には再生できなかったようです。3本でもたくましく生きて欲しい・・・。

6/26

 最近、エサのエノキの状態が萎れているのが気にはかかっていましたが、今日1匹が下に落ちて死んでいました。息子には水分不足の可能性が高いことを伝え、もっとエサを新鮮な状態にしないといけないことを伝えました。最近は学校が始まり、世話をするのが面倒くさくなっているのかもしれません。

新しいナナフシの家
新しいナナフシの家

6/28

 昨日タマムシが捕れたので、ダンボール飼育ケースはタマムシに譲り、ナナフシは飼育ケース大に引越しました。一緒にゴマダラチョウの幼虫も入れています。

 飼育ケースには、ペットボトルを切った枝差しに水を入れ、そこに枝を何本か刺しています。毎日枝差しの水は替え、枝の根元も毎日斜めに5~10㎜カットします。そうすると葉っぱが長持ちするそうです。

脚が再生したナナフシ
脚が再生したナナフシ

7/4

 昨日のうちに脚が3本だったナナフシ脱皮しました。まだお尻の方に脱皮した皮が付いています。元々は左前脚と中脚左右の3本しかなかった個体です。脱皮の最中に左前脚がとれてしまったようです。右前脚と後脚左右は再生していますが、細く十分には機能していないように見えます。脚は太くなっていくのか疑問です。現在は5本脚になりました。

7/7

 父のミスで5本脚のナナフシの前脚を飼育ケースの蓋で挟んでいました。1日身動きが出来ず、弱っていました。死んだりしないか心配です。

2020/7/8ナナフシの様子
2020/7/8ナナフシの様子

7/8

 昨日脚を挟んだ5本脚のナナフシ(写真右側)は、今日も生きていました。良かった。でも、まだ元気がないように感じます。元気になってくれ~。

7/11

 5本脚のナナフシは、枝につかまっているのがやっとのようで、エサが食べれていないかもしれません。飼育ケースを清掃した後にエノキの葉の上に乗せました。

7/25

 5本脚のナナフシの再生した脚は太くなっていかないようです。脱皮直後の太さのままです。あれから脱皮をしていないので成虫になってしまったようです。枝につかまっているのがやっとで、今日の水替えの時に枝に乗せておきましたが、直ぐに落ちてしまい登れないようでした。気にかけてときどき飼育ケースを覗こうと思います。

7/26

 今日、飼育ケース内を見てみると卵らしきものがありました。フンとは形状が違い、小さな植物の種のような感じです。写真には小さすぎて綺麗に写りません。何んとかいい写真が捕れたら載せようと思います。

7/28

 5本脚のナナフシが前脚がとれてしまい4本脚になってしまいました。よくエノキから落ちてしまい登ることができません。そこで、工夫して葉っぱが下につくように、もう一つ枝を刺すカップを用意しました。これなら落ちても食べることができると思います。

ナナフシの飼育ケース
ナナフシの飼育ケース

7/29

 4本脚のナナフシが死んでしまいました。前脚がなくなり頭を上げることができなくなってしまったので、エサが食べれなくなったのかもしれません。長く生きてくれていたのに残念です。

8/18

 今日、覗いて見るとナナフシ元気がない。枝にぶら下がっているのがやっとのようです。水を飲ませようとしましたが飲みません。

8/19

 朝見てみると死んでいました。最近長く飼育していた昆虫達がどんどん死んでいます。やはり暑さが厳しいせいだと思います。昼間はエアコン点けているのでそんなに暑くはないはずですが、深夜から朝にかけてはエアコンを点けていません。暑さ対策を考え中です。

 

今回の飼育で解ったこと、問題点

 4月末に幼虫を見つけてから4か月弱飼育していました。幼虫は脚がとれると再生しますが、1回の脱皮では完全再生は難しいようです。今回の最後の1匹の死因は暑さが原因と思われます。昼はエアコンを26℃設定で点けていますが、夜は切ってしまいます。8月初旬~中旬は最低気温27℃前後でしたが、私の自宅は2階で熱がこもりやすく、気温以上の室温になっていたと思われます。おそらくは30℃を超えていた日が続いていたと思います。30℃を超えるような暑さは昆虫にとっては過酷のようです。電気代のことがあるので、エアコンを点けたままにするのは避けたいところです。何かいい方法はないものでしょうか?

2021/5/9

 近所の古墳に昆虫採集に行きました。1時間半ほどで、ゴマダラチョウ1匹、ツマグロヒョウモンのオス1匹、アゲハのオス2匹、そして、ナナフシの幼虫を2匹ケヤキで見つけました。縦17㎝横30㎝高さ20㎝の中型の飼育ケースで飼うことにしました。

ナナフシの飼育ケース内の様子
ナナフシの飼育ケース内の様子

 ヨーグルトのカップにティッシュを湿らせたものを入れ、そこにエノキの枝を挿しました。

ナナフシの幼虫
ナナフシの幼虫

 幼虫なので黄緑色の脚に黒色のシマシマが入っています。飼育ケースをしばらく観察していると、早速、エノキを食べ始めました。

5/12

 幼虫の1匹が大きくなっているような気がします。もしかしたら脱皮をしたのでしょうか?息子曰く、脱皮した皮を食べたのではとのこと。そういうものなのでしょうか?2匹とも元気。フンもしています。

ナナフシの幼虫40㎜
ナナフシの幼虫40㎜

5/19

 先日さらに1匹が加わり、ナナフシの幼虫は3匹になりました。ナナフシの幼虫(上の写真で脚がシマシマがあるのが判ると思います)が40㎜ぐらいに成長しています。3匹共元気でフンも沢山します。

5/22

 今日飼育ケースを見て驚きました。ナナフシがかなり大きくなっています。測ってみると大きなもので50㎜程度にまで成長しています。おそらく、脱皮をしたのだと思いますが皮が見当たりません。食べたのかな?

ナナフシの幼虫50㎜
ナナフシの幼虫50㎜

6/5

 ナナフシがまた成長しました。大きいもので75㎜ぐらいです。また、1匹が脚が取れたものがいましたが、脱皮を繰り返して元通りになりました。脚が根元から取れてしまうと脱皮1回では完全に治らず、2~3回かかるようです。

ナナフシ 75㎜
ナナフシ 75㎜

6/20

 6/17に大きさを測定したら3匹共に90㎜~95㎜になっていました。息子が脚のシマシマが無くなったのでもう成虫ではないかと言っていました。今日飼育ケースの中に卵らしきものが1個ありました。もう産卵したのでしょうか?

6/24

 産卵は半信半疑でしたが、今日見ると10個以上卵がありました。もう成虫になったようです。ナナフシは単為生殖です。