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タマムシの飼い方(旧)

天然のタマムシ(ヤマトタマムシ)の飼育は非常に難しく、昆虫に詳しい方に聞いても同じ答えが返ってきます。 その原因として、タマムシは環境変化などのストレスに非常に弱く、すぐに拒食症になることが挙げられます。 何度も飼育を挑戦する中で、もっとも良いと思われる方法を紹介します。

タマムシ
タマムシ

分布 本州、四国、九州

特徴 一般にタマムシと呼ばれているのは、正式にはヤマトタマムシを指しています。体長25~40㎜程度。6~8月頃に見られます。日本の甲虫の中で最も美しいともいわれます。全体に緑色の金属光沢があり、前胸背から上翅の末端に向かい1対の赤いラインがはしります。飛ぶ速さは人間が走っても追いつける程度です。

生態 エノキやケヤキの高い所を暑い晴天の日によく飛翔します。特にオスがよく飛び、伴侶を探すためのようです。また、メスが産卵のため伐採木などにもくるようです。自然界では2~3年で成虫になり、寿命は1か月に満たないとか100日とか言われています。成虫のエサはエノキ、ケヤキの葉、アキニレなども食べるそうです(ニレ科の植物なら他のものも食べる可能性はあると思います)。幼虫は広葉樹の朽木の材部。産卵は伐採木、広葉樹の半枯れの部分などにし、木肌のひび割れ所、木と皮の間などに産み易いそうです。

飼育 大変難しいと思います。ストレスに弱くすぐに拒食症になります。

タマムシのめす
タマムシのめす
タマムシのおす
タマムシのおす

 タマムシのおす、めすの見分け方は上の写真のお腹の先の部分を比べると判ると思います。おすの先は割れていて、めすは何もありません。

飼育に必要なもの

①飼育ケース

②水をためるための小さなカップ(ヨーグルトやゼリーなどの容器でいいです)

③エノキ、ケヤキなどの枝と葉(アキニレなども食べるそうです)

④エノキ、ケヤキなどの伐採木

エノキの枝を刺したカップ
エノキの枝を刺したカップ

 ②の容器に水を入れ、そこに③のエノキなどの枝を差し込みます。以前は、容器に脱脂綿やティッシュペーパーなどを入れて、タマムシの溺死防止にしていましたが、今では水だけ入れています。脱脂綿などを入れておくと安心ですが、面倒なのでやらなくなってしまいました。

タマムシの飼育ケース
タマムシの飼育ケース

 ①の飼育ケースの中に、④のエノキなどの朽木、先ほど作ったエノキの枝を挿したカップの順に入れます。最後にタマムシを入れて終了。卵を産ませない場合朽木はいりません。写真はタマムシがフンをしたとき取り替えやすいように紙を敷いています。

 エノキやケヤキは珍しい木ではありません。神社、公園、学校などによくあります。特にエノキは道路脇に生えているなど、(私の周辺では)身近なところに生えていることが多いです。また、アキニレなども食べるそうです。私は試していないのですが、ニレ科の植物なら他にも食べるのもがあると思います。タマムシは繊細な昆虫です。出来れば捕獲した場所に生えていたものと同じ種類の葉っぱで飼育した方がいいでしょう。

タマムシの飼育はエサの鮮度が重要

 タマムシは繊細な昆虫で飼育下だと拒食症になりやすく、新鮮なものでないとなおさら食べてくれません。下のリンクに枝の鮮度を保つ方法をまとめてあります。エノキを採って来る時の注意点としまして、生えて間もないエノキの木(まだ若く枝の部分がまだ緑色をしているもの、葉は柔らかく美味しそうに見えます)はしおれるのが早いようなのでタマムシのエサには向きません。蛇足ですが、エノキの葉を食べるゴマダラチョウの幼虫は、生まれて間もない1齢、2齢幼虫の時、この若い葉を与えた方が生存率が高くなります。生まれたばかりの赤ちゃんでは硬い葉が食べれないのです。

長く飼育出来たら産卵を

 長く飼育出来たら産卵するかもしれません。産卵を考えた場合、タマムシには朽木の硬さ、新しさにはこだわりがあるようです。また、朽木の割れ目などをわざわざ作ってやる必要もあるようです。タマムシ愛好会さんのホームページには次のように書かれています。

・枯れてから年月の経過した物、朽木には産卵しない。

・半枯れの部分、伐採木、伐採直後の切り株、等を好む。

タマムシがエサを食べてくれない

 タマムシの飼育が難しいと言われる理由は、環境が変化すると直ぐに拒食症になってしまうことです。個体によって性格にも差があるようで、食べる個体は何もしなくても勝手に食べてくれます。私の場合、タマムシのエサBOX(下記で紹介する)に閉じ込める方法でも、ほとんどの個体は食べてくれませんでした。エサを食べる個体は生き残っていきますが、そうでない個体は2~4日で死んでしまいます。2018年には、8匹一度にタマムシを捕ってきましたが、1匹も食べてくれず、4日目にはすべて死んでしまったこともあります。

 

 タマムシのエサBOXは、エサの食べが悪い時に作るそうです。

下記のリンクのサイトに正確な作り方が紹介されています。

 私は上記のリンクを見て、タマムシのエサBOXを再現しようとしましたが、我流であったためできず、結局、大した成果は得られませんでした。これが再現できれば、より生存率が高くなると思います。

タマムシの飼育で最も重要なこと

 タマムシは直ぐに拒食症になります。これは環境変化などによるストレスが原因と思われます。つまり、必要以上に人間の手をかけず、そっとしておくことが重要なようです。

 以前は、飼育環境が悪かったせいか捕獲日から4日目にはほとんど死なせてしまっていました。そこで、私はタマムシに無理矢理エサを食べるという方法を採りました。すると、少し長く飼育出来るようになりました。ただ、せいぜい1週間程度でした。

 2020年は広い飼育ケースならストレスが減ると思い、ダンボールで飼育ケースを作りました。大きさは縦56㎝✖横46㎝✖高さ100㎝のものができました。容量だとホームセンターで売っている最大サイズの飼育ケースの4~5倍ぐらいあると思います。タマムシをそこで7匹を飼育したところ、45日間、27日間、20日間10日間飼育できた個体がいました。残りの3匹は3~4日で死んでしまいました。その3匹は、エサを食べないと思って無理矢理エサを食べさせたり、触ったりしたものでした。そっとしておけば、エサを食べる個体は自分から食べてくれるようでした。今までの苦労から、こんなに簡単に長く飼育出来ることが意外でした。

 後記に紹介しているシュダンマーさんも出来るだけそっとしておくことによって、20日間飼育できたそうです。驚くべきことは20㎝✖15㎝✖10㎝という小さな飼育ケースで飼育されていることでした。飼育ケースの大きさより静かで落ち着ける環境こそがタマムシにとって大切ということになります。

タマムシの飼育の様子
タマムシの飼育の様子

タマムシの生死を分ける3日目の夜

 先ほど書きましたが、2020年は7匹飼育して、4匹は長く飼育出来ましたが、残りの3匹は3~4日目(捕獲した日を1日目と数えて)で死なせてしまいました。そこで問題なのが、3日目の夜にタマムシがエサを食べていなかった場合どうするべきかということです。まず4日目には死んでしまいます。そのままそっとしておき最後の1日で食べてくれることを祈るか、無理矢理エサを食べさせて自分で食べるようになるまでの時間を作るかという選択肢があります。ところが、無理矢理エサを食べさせることは、先ほど書いた”そっとしておく”ということと矛盾します。しかも、このような自分でエサを食べてくれない個体は、無理矢理エサを食べさせてもなかなか食べません。タマムシのエサBOXが再現出来れば、そこに入れるのも1つの方法です。この3日目の夜にどう行動するかがこれからの課題です。

タマムシに無理矢理エサを食べさせるのは大変!

タマムシにエサを食べさせている様子
タマムシにエサを食べさせている様子

 上の写真はタマムシに無理矢理エサを食べさせている様子です。これが非常に大変です。葉のところにタマムシの口を持っていっても直ぐには食べてくれません。まず、タマムシはもがきます。食べるどころではありません。それでも我慢強くエサを口のところに持っていくと、その内エサを噛み始めます。さらに我慢強く続けるとやっと食べてくれます。これが10分~20分かかると思って下さい(これも個体の性格差によって違います)。これを自分でエサを食べるようになるまで続けます。非常に苦労します。この方法は、どうしようもなくなった時の1つの選択肢と考えて下さい。

ダンボール飼育ケース
ダンボール飼育ケース

 2020年の飼育で思ったことは、ダンボール飼育ケースの有用性です。

①コストが安い

②大容量の飼育ケースの製作が可能

③汚れてしまったら捨てればいい

 ①コストはダンボールはタダ。購入するのは窓に使う網とガムテープくらい。網も虫網の壊れたものを流用したりすればタダ。ホームセンターなどで飼育ケースの特大のものを買おうとすると数千円かかります。②の大容量も冷蔵庫などのダンボールを手に入れれば簡単に作れます。また、蝶(タテハ、ヒカゲチョウ)などは何匹も飼うことができます。息子は10匹程度一度に飼育していたこともあります。蝶は飛んでも広いので翅がボロボロになりにくいです。③虫のフンなどで汚れたら捨てればいいのです。

欠点としては

①クワガタなどには使えない

②湿気を含むと柔らかくなってしまう。

③作る労力がいる。

 ①クワガタなどの隙間に潜り込むタイプの昆虫には使えません。②ダンボールは湿気を含むと柔らかくなって強度が落ちます。長く使っているとどうしても弱くなっていきます。そうなったら、強化パーツで補強するか新作します。③労力はいります。ダンボール飼育ケース1号は8~10時間かかりました。2階建てで分解ができ、ちょっと凝った作りにしました。大きなダンボールを手に入れればもっと早く作れます。

 ダンボール飼育ケースに興味を持たれた方は下のリンクへどうぞ。

タマムシの飼育Q&A

Q タマムシのエサは何がいいでしょうか?

A 主に、エノキ、ケヤキなどがエサになりますが、アキニレなども食べるそうです。 ニレ科の植物なら食べる可能性はあると思います(私は今まで試してはいません)。 捕獲したタマムシがいた木の葉が最もいいと思います。

 

Q エサはいつ頃取り替えますか?

A エサ(エノキ、ケヤキ)の枝は1~3日で取り替えます。 実際は3日以上でも葉は萎れないこともあります。 萎れる前もしくは、萎れたら直ぐに取り替えて下さい。

 

Q エサが直ぐに萎れる時があります。 どうしてでしょうか?

A エサを長持ちさせるには水を綺麗に保つ必要があります。 水が綺麗でも枝の切り口が傷んでいると水の吸い上げが悪くなります。 葉の蒸散作用で水が葉から失われる方が吸い上げる量より多くなると萎れてきます。 毎日水を替え、枝先を切って枝の切り口を新しくする必要があります。 また、空気中で枝先を切ると気泡が入ってしまい水の吸い上げが悪くなることがあります。 これは頻繁に起こります。 この対処法は、枝先を水を入れたバケツなどの中で切ることで気泡が入らなくなります。 これは生け花などで行われる”水切り”と呼ばれる方法です。

 

Q 霧吹きなどで飼育ケース内を加湿しますか?

A 私はダンボール飼育ケースを使っていたので加湿しませんでした。 ただ、後記に紹介するシュダンマーさんは1日最低2回霧吹きで加湿していたそうです。 人間も湿度が高い時はあまり喉が渇きませんが、低いと喉が渇きます。 特に気温が高くなってくるとタマムシに湿気を与えた方がいいと考えています。

 

Q 飼育ケースはどこに置くのがいいでしょうか?

A 直射日光の当たらない比較的明るい場所がいいと思います。 直射日光が当たると飼育ケース内の室温が予想を超えて上昇する可能性があります。 タマムシは日陰で暮らす昆虫ではないので、明るい場所の方が自然な営みができると思っています。 また、最も重要なのが人の気配がしない静かな場所に置くことです。

 

Q 飼育の適温は何℃くらいでしょうか?

A 26℃前後と思っています。 私の住んでいる所(岐阜県岐阜市)では、タマムシは6月下旬~8月頃によく見られます。 夏の昆虫という印象があります。 ただ、真夏の30℃を上回るような日にはエアコンなどで温度管理をした方がいいようです。 2020年の飼育では、8月上旬(気温が高くなってきた頃)に次々と昆虫達(タマムシを含め、蝶など)が死んでいきました。 真夏の飼育には注意が必要だと感じています。

 

Q 観察したり、触ったりしてもいいですか?

A タマムシは臆病な昆虫です。 タマムシがエサを食べている時、私が覗いているのに気づくと、エサを食べるのをやめ、じっと動かなくなったり、私が動くとそれにびっくりしてビックと反応したりします。 観察したり、触りたい気持ちは解りますが、できるだけ”そっとして”おきましょう。

 

Q 水を何らかの方法で与えた方がいいでしょうか?

A 真夏などはタマムシもいつも以上に水分が必要となると思います。 霧吹きで飼育ケース内を濡らすのがいいのではないかと思います。 また、私の場合は、エサを与える時その葉っぱを水で濡らしてから与えてもみましたが、ハッキリとした効果はまだ確認できていません。

 

Q いつもと違いよく羽ばたいています。 どうしたのでしょう?

A タマムシがよく羽ばたく時は、雄が雌を探していることが多いです。 また、翅を中途半端に開いていたり、裏返ってバタついているものは弱ってきている時に多い行動です。 私の経験上では次の日には死んでしまいます。

 

Q タマムシが弱っています。 どうにかなりませんか?

A 今のところ弱ってしまったタマムシを回復させる方法は分かっていません。そうならないように出来るだけ健康な状態を維持するようにしています。

近所で捕獲したタマムシ
近所で捕獲したタマムシ

 タマムシは、偶然見つける以外なかなか捕まえれません。でも、探してみると、案外、身近な所に居たりします。タマムシのいる木の見つけ方と、捕まえ方については、ホームページの”捕獲、捕まえ方”のタマムシのところで紹介しています。私は、タマムシを捕りに行くと、2018年頃には1回で8匹前後捕れましたが、2019年は環境変化があったようで2~4匹程度しか捕れなくなりました。2020年に捕りに行っている場所だと1時間で1~2匹程度です。タマムシがよく飛んでいる木を見つけられるかが成果につながります。

タマムシの飼育記録(訪問者編)

 ここでは、訪問者の方の中でタマムシの飼育方法を教えて下さったものを紹介します。

シュダンマーさん

>まず、飼育ケースは、たまたま家で空いていた飼育ケースを使用しました。サイズは20㎝✖15㎝✖10㎝位の大きさです。正直、ちょっと小さいとも思いましたが、大きいケースをわざわざ買うのもと思い、そのまま此方で通しました。次にケースの下の部分は甲虫なんかで使うヤシのチップをひきましたが、これはたまたまあったからです。それから餌が榎や欅の葉と聞いて、榎探しです。たまたま近所に欅が有りましたから、その樹から葉を取って与えてました。植物なので枝の部分は水の入るピックに差して、飼育ケースに入れました。これで大体2日は保てたので、2日に一回は葉の交換を行いました。タマムシの方から餌の葉を食べてくれたので、此方がわから葉を食べさせる行動はしませんでした。それから、1日最低2回は霧吹きで水やり。あと、温度差が少なくて刺激が少ない場所、我が家の場合は玄関の下駄場の下でしたので、此処に安置。それからタマムシにストレスを与えないように、なるべくタマムシには触れないようにつとめました。小さなケースでしたが、一匹で飼っていたことも、ストレスにならずによかったのかなと思っています。

管理人>シュダンマーさんはこの方法で2020/8/22まで20日間タマムシを飼育出来たそうです。

おこめさん

>去年飼育した個体では、20日近く生きた個体がいます。あと飼育ケースをもう少し大きめのものにしてえのきをもっと沢山ケースに入れた方がいいです。えのきの葉は、二日に一回ぐらい変えた方がいいです。

管理人>これは上記の私の飼育方法を見て助言を下さったものです。

 タマムシの飼育について、試行錯誤して良い方法がないか探しています。タマムシを長く飼育出来た方、良い飼育方法を知っている方、ぜひ、ホームページTOPの”ご意見、ご感想”のところに飼育の仕方を書き込んで頂けると幸いです。